一般に、貸室契約や空室率の統計には、まやかしがある。たとえば現在が九月で、Xビルに入居中の甲企業は翌三月まで賃貸契約をしているとする。ところが新築のYビルは猛烈に営業活動を行ない、甲企業に対してXビルとの賃貸契約が切れる三月までの六ヵ月間は、Yビルの賃料を無料とする条件で、一〇月から移転することを承諾させた。すなわちXピルは六ヵ月間の賃料をもらうにはもらうが、実際は空室になる。したがって、Xビルには賃料が入り、Yビルには実際入居していることから、理屈上は両方とも入居中といえる。入居者のダブル計上である。空室率は実態よりも低めに発表されているのである。ビルの新築完成が多く、子ビルから親ビルヘテナントの移動が激しい時期にはこのようなことが起こる。子ビルにテナントを抜かれた孫ビルでは、そもそも調査拒否が多く、単純に比較はできないが、未充足率は一一%と低くなっているものの、テナント使用分に対して自社使用分が倍になっており、テナント収入は厳しい状況だ。同調査では、孫ビル−ビルが売りに出されていたこともわかった。こうした子ビル、孫ビルには安い賃料で、従来一社に貸していた場所を二〜三社に分割して貸すところもあった。前のテナントよりも小粒の会社へ貸さざるを得なくなる。小粒でも優良企業はいくらでもあるが、問題のある企業もそれなりに多い。窮地に陥った子ビル、孫ビルのオーナーらが得体の知れないテナントを苦し紛れに入居させてしまう現実もある。こうした地域では地価の下落だけでなく、治安の悪化すら危惧される。華やかな新オフィスビルの竣工ラッシュの裏には、このような現実もある。
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