一九二三(大正一二)年におこった関東地震は、関東大震災と呼ばれる未曾有の大災害を引きおこしました。この地震の被害はあまりにも大きくかつ多面的ですが、木造建築の被害にかぎっても、きわめて甚大でした。全壊家屋は神奈川県を中心に約一三万棟、死者・行方不明は約一四万人に達しました。この木造の被害で特徴的なことがふたつありました。ひとつは、山手と比較して下町の被害が大きかったことで、これは地盤のちがいによるものです。
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下町ではやわらかい地層である沖積層が三〇メートルを超すほど厚く堆積しており、このような地盤では、卓越周期が長くなります。地震のときの地盤の揺れ方(振動波形)には、さまざまな周期をもつ波がまじりあっていますが、そのうちでもっとも大きな勢力をもつ波の周期のことを卓越周期といいます。したがって、やわらかくて固有周期の長い木造家屋は一種の共振をおこして大変形し、倒壊する可能性が高くなります。このような地盤のことを、「軟弱地盤」あるいは「悪い地盤」と呼んでいます。このように悪い地盤で木造家屋の被害が大きいことは、江戸時代からも知られていましたが、そのことが統計的に実証され、かつ理由が明らかになったのは、関東地震のときでした。